第０１話 高子と業平 在原業平朝臣
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
行平と弘子 中納言行平
立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む
第０２話 貞明と綏子 陽成院
筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて ふちとなりぬる
第０３話 宗貞と吉子 僧正遍昭
あまつ風 雲のかよひ路 ふきとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
第０４話 康秀と業平 文屋康秀
ふくからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
第０５話 東下り 小野小町
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
貫之と喜撰 喜撰法師
わがいほは 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
第０６話 うた変。+
第０７話 義孝と源保光の娘 藤原義孝
君がため をしからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな
高内侍と道隆 儀同三司母
忘れじの 行く末までは かたければ けふを限りの 命ともがな
第０８話 末の松山 清原元輔
ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ 末の松山 波こさじとは
実方と諾子 藤原実方朝臣
かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを
第０９話 少納言と行成 清少納言
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ
第１０話 名古曽の滝 大納言公任
滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
第１１話 香子と藤子 紫式部
めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし夜半の月かな
第１２話 道雅と当子 左京大夫道雅
今はただ 思ひたえなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
うき世の月 三条院
心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
第１３話 定家と式子 式子内親王 権中納言定家
玉のをよ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ
